いままでに移植手術を済ませた患者さんたち


1988年8月、帰国時に大阪空港で出迎えの方々と


1989年手術後、ICUから病室に戻られた時に撮影(手前は奥様)


移植手術が終り、帰国前日に お世話になったフィリピン腎センターのアラノ博士と撮影


帰国直前に、お世話になった腎センターのスタッフと一緒に記念撮影


帰国直前に,フィリピン腎センターの所長アラノ博士と撮影。(右側は婚約者のMさん)


帰国前日、アラノ博士と記念撮影


待望の移植手術の模様
(医師団の許可を得て当会にて撮影)


新しい腎臓が働きだし、利尿が認められた瞬間
(医師団の許可を得て当会にて撮影)
5. 腎臓移植手術が実現するまでの流れについて
1) 現地医師団(当会)へのお申し込み
ご自身の病歴・透析歴、また、患者さんにとって移植手術がなぜ必要かを記した書類を提出していただきます。
患者様をお世話させていただく度に毎回思うことですが、この「病歴自己申告書」は現地医師団にとって、極めて大きな意味を持つものです。
したがいまして、腎不全になられた時期や原因、また、疾病の進行状況などを時系列に沿って詳しく記した書類を作成していただきます。(西暦表記)
また同時に、服用されている薬を、いつ・どれだけの量お飲みになっているかもお知らせください。毎日の服用薬は初めて患者様を診察する医師にとって大きな関心事であることに、日本も外国も変わりありません。
なお、薬の名称は日本の「商品名」のため、当会にて国際的に通じる「一般名(成分名)」=ジェネリック・ネームに置き換え、病歴自己申告書とともに忠実に英訳し、現地医師団に提出いたします。
また、心あるお医者様からご自身の検査データや HLA ティッシュタイピングに関する情報がいただけましたらば、それらも参考資料として翻訳の上で医師団に提供することは言うまでもありません。
これらの事前準備は、組織適合検査と移植手術をスムーズに受けるために必要不可欠な作業ですから、何枚もの書類作成でお手間を取らせますが、どうぞご協力ください。

2) 組織適合検査 (PMC) へ出発
組織適合検査 (PMC) を受けるため、現地病院に約一週間の予定で出発していただきます。
この検査は、患者さんのHLA(ヒト白血球抗原)を調べると共に、移植手術の有益性や、身体的可能性について詳しく調べるもので、検査により判明した HLA タイプにより、この後の移植手術までの待ち時間が経験的におおよそ計算できます。
なお、この検査の段階で、移植手術の障害となる疾患が見つかった場合には、日本国内でその障害を取り除いてから移植手術に臨んでいただきます。

また、この検査は、医師側から患者様を診るという目的の他に、患者様の目で現地医療機関や主治医を観察するという目的もあります。
検査出発前のお申し込みの段階で、現地の事情については詳しくご説明しておりますが、「百聞は一見にしかず」のことわざどおり、これから移植手術をお受けになるにあたって、実際に執刀する医師にお会いになって話をされること、また、医療機関がどれだけ優れているかを実際にご自身の目で確認することも、安心を得る意味では重要なことであると考えます。
重大な外科手術を安心して任せられる医師や病院なのか否かを、移植手術前の検査の段階で直接ご確認いただくとともに、医師および看護婦等と事前接触され、コミュニケーションを図っておくことも意義深いことであると言えるでしょう。

ところで、ネット上に流れているいくつかの情報によれば、フィリピンではこの事前検査を行わず、血液のサンプルを現地に空輸するだけで済ませると述べられているようですが、これはとんでもないことで、移植外科医と腎臓内科医が直接患者様の全身状態を確認することは大変に重要な意味を持ちます。
血液サンプルだけでは解らない、臓器移植を妨げる他の疾患が隠れているかも知れないからです。事実、過去にお世話させていただいたある患者様の場合、組織適合検査の段階で行ったCTスキャンの結果、小さな胆石が見つかり、移植手術実施前に日本でこれを摘出するよう現地の外科チームから指示がありました。なぜならば胆石の存在により胆汁の流れが妨げられ、移植された腎臓に悪影響があるからに他ならず、これを見逃して移植手術を行っていたとしたら、重大な結果を招いていたかも知れません。
患者さんを一度も診察せず、血液サンプルの評価だけで移植手術に踏み切る愚かな医師が存在するのも、またフィリピンの一面ですから注意が必要です。
仮に、日本国内の医療機関で移植を前提とした多くの検査を行ったとしても、その検査結果を盲目的に信用し、これによって自ら患者様を事前に診察しないなどということがあったとしたら、こんな無責任なことはありません。

臓器移植という、ともすれば大きな危険を伴う外科手術を行う以上、移植医自らが患者様の状態を念には念を入れて把握・確認することは当たり前のことであり、また、手術後の成績を大きく左右する要因でもあると確信します。
この組織適合検査への出発は、東京または大阪から直行便を利用し、現地滞在中の透析も、日本でのスケジュールに合わせてお受けいただきます。
(出国から帰国まで、当会の職員がお付き添いします)

3) 移植手術へ出発
医師団により、患者さんの HLA に合致した提供者が確保されると、手術のために再び渡航していただきますが、PMC から移植手術本番までの待機期間は、患者さんの HLA を含めた組織のタイプにより大きく左右されます。
過去の経験上、最も早い患者さんで待機期間は5日、最も長くお待ちいただいた患者さんで約3年でしたが、平均待機期間は、1ヶ月ほどでした。
現地入りした患者様は、病院に入院後、再度全身状態の検査を行い、また、ドナーの血液と患者様の血液を実際に混ぜて反応を確認する「クロスマッチング検査」を経て、手術に対して問題が無いと判断されれば移植手術に臨んでいただきます。

4) 移植手術の実施
待望の移植手術は早朝から開始され、通常要する時間は、3〜4時間程度です。
手術終了後は、リカバリールームからICUを経て、おおむね手術後2日程度で個室の病室に移動します。
移植手術に際しては、医師団から要請があれば、当会の職員が通訳として手術室にも立ち会いますのでご安心ください。

5) 移植手術終了後は・・・
術後の経過にもよりますが、およそ1週間〜10日の間、病室で回復を待っていただきます。そして病室に戻ってからは、一日に最低 2,000 ccもの水を飲んでいただきます。
今までは、望んでも水分の摂取を制限されていた患者さんですが、手術後に新しい腎臓が正常な活動を開始すると、逆に水分への欲求が無くなり、2,000 ccもの水を摂取することが非常に苦痛に感じられることが多いようです。
しかし、プライベート・ナースから定期的に(数十分〜1時間の間隔)決められた量の水を摂取するよう指示されますので、この指示には必ず従ってください。
病室に戻って来てカテーテルが抜ければ、その瞬間から自力でお手洗いまで歩いていただきます。ベッドの上り下りの際は未だ患部が痛むとは思いますが、努めて運動するように努力してください。

6) 退院後の診察から帰国へ
1週間から10日程度の入院期間が過ぎ、医師から退院の許可が下りると、今度は病院近くのホテルに移動していただきます。
ホテルにも、プライベート・ナースが24時間付き添い、各種の記録を作成して医師に提出いたします。
ホテル滞在中の検査や診察ですが、病院スタッフが客室まで訪れて採血を行い、また、医師も同様にホテルの客室に来て診察を行ってくれるよう、関係者のご協力を得て今年から変更をいたしました。
これは、様々な病気に罹患した多くの患者が訪れる病院の外来で順番待ちをすることによる感染症を予防する観点からであり、まさに理想的な予後管理体制と言えるでしょう。
患者様ごとの予後経過にもよりますが、おおむね2週間ほどホテルに滞在しながら検査・診察をうけていただき、医師の帰国許可を待って日本にお帰りいただきます。
検査や診察、また、帰国に際しては、当会の日本人職員が常に付き添い、通訳をすることは言うまでもありません。
現地での総滞在期間ですが、移植手術のために渡航した日から帰国まで、おおむね1月程度が平均的な滞在期間です。
(上記の概略は、平均的な術後状態を示す患者様のケースであり、すべての患者様にあてはまるものではありません。患者様個々の状態により、入院期間・ホテル滞在期間は異なって参ります。また、医師団や当会が患者様の術後状態を保障するものではないことはご理解ください)

7) 帰国後の管理(アフターケア)
帰国後は、移植医療を行なっている国内の病院に継続通院(最初の一年位は月に2回ほど)をしていただきます。
現地医師団は、日本の医師が術後の流れを理解するための書類を作成しますので、当会が翻訳してお渡しいたします。
また帰国後に予後管理をお願いする病院が決まっていなかったり、探し方がわからない患者様には、当会が医療機関の確保方法についてもアドバイスさせていただきますので、どうぞ ご相談ください。

なお移植手術後は、HLA を高度にマッチングさせたとしても、免疫抑制剤を服用している限りは免疫力が低下しています。アフターケアを担当してくださる医師からも説明があると思いますが、特に以下の事柄に十分ご注意ください。

・免疫抑制剤は、決められた量を決められたタイミングで確実に服用する。飲み忘れは厳禁です。旅行の際などは現地での調達が困難なため、十分な量を持参してください。
・人混みを避ける(特に術後の数ヶ月)
・手洗い及びうがいの励行
・感染性疾患に罹患している人に近寄らない
・ペットなどとの濃厚な接触を避ける
・医療機関(歯科医も)を受診する際には、免疫抑制剤を服用していることを必ず告げる
・市販薬の服用は極めて慎重に
・免疫抑制剤は、グレープフルーツや、グレープフルーツジュースと一緒に飲まない
・身体を冷やしたままにしない
・塩分の摂取は出来るだけ少量に
・生ものの摂取は慎重に
・水分の補給は、こまめに十分に
・発熱したら、すぐに医療機関を受診する

透析からの離脱を果たしても、正常に機能している腎臓は一つだけです。
くれぐれも無理を重ねぬよう、以上の事柄に留意いただき、『いのちの贈りもの』を大切にして、末永くご健康にお過ごしください。

【保険・医療費控除について】
生命保険や医療費控除の活用方法に関する情報をお知らせいたします。
現時点で有効な生命保険または医療保険にご加入の場合、外国での治療であっても、現地医師団作成の診断書を添付することにより、手術給付金および入院給付金の請求を行うことが可能ですから、詳しくは各保険会社にお問い合わせください。
せっかく加入している保険です。有効にご活用ください。

また同様に、現地医師団の医療費領収書を添付することにより、200万円を上限とした所得税の医療費控除が受けられます。ただし国外での治療のため、高額療養費などの医療費そのものの還付を受けることは出来ません。
詳しくは、税理士または市区町村の税務課までお問い合わせください。
保険や税の控除を上手に利用しましょう。