腎臓移植

フィリピン腎移植
8. 母を救った腎臓移植(MKさんの投稿体験手記)
  〜患者の家族の目から見た海外での腎移植〜

組織適合検査
協会に申し込みを済ませた翌月の、11月19日、あわただしくパスポートを取得した 母と私は、移植手術の前段階となる『組織適合検査』を受けるために、日本を出発す ることになりました。この検査の目的は、

(a) 各種の臓器や全身状態が、移植手術に耐えられるかどうか
(b) 移植の有効性があるかどうか
(c) ティッシュタイプ(HLA組織型)はどうか
だいたい以上の事柄を調べることを目的としていました。
(a) は、文字通り手術や術後管理に耐えられるかどうかという事であり、透析患者は誰 でも移植が出来るということではなく、腎臓以外の、例えば肝機能が著しく低下している ような場合や、肝炎に感染している場合等は、原則としてそれらの治療を済ませないと 腎移植は出来ないそうです。

また (b) の『有効性』ですが、重度の糖尿病性腎不全患者の場合などは、腎臓だけを 移植しても無意味であり、場合によっては、すい臓も同時に移植しないと腎移植の効果 は無いと聞かされました。

そして最も重要な検査が (c) のHLA組織型検査だそうです。
HLAとは、ヒト白血球抗原の略で、赤血球のA型・O型などと同様に、人それぞれに異な った型を持っているそうですが、赤血球と決定的に違う点は、HLAには何千通りもの組み 合わせがあるという事で、ひとり一人が個別に有する『細胞の型』とも言えるそうです。

さて皆さんは、『拒絶反応』という言葉を耳にされたことがあると思いますが、腎移植に限ら ず、臓器移植後の患者が最も恐れるものは、拒絶反応ではないでしょうか。
移植された臓器が、患者の体内で同化せずに『拒絶』されることを意味しますが、母の場合 も例外ではなく、手術後は大きな拒絶反応が起こらないよう、毎日毎日祈ったものでした。

現地滞在中の私の主な仕事は、移植前の約二週間は母の話し相手でありましたが、手 術後は、じっと病状を見守るくらいしか特にする事もなかったので、ドクターを捕まえては良い 機会とばかりに、医科大生になったつもりで、あれこれと聞いて勉強させてもらいました。 そのたびにドクター達は、イヤな顔ひとつせずに非常に易しい英語を使って説明してくれました。
受け売りになってしまいますが、その説明によると、拒絶反応とは免疫作用の一種で、患者 の体内では、移植された他人の臓器を『異物』としてとらえてしまう結果、患者の白血球の 中にあるリンパ球が、その異物を排除しようとして攻撃を仕掛けてしまう事だということです。

免疫反応はバカ正直なために、せっかく戴いた臓器を他の細菌やウイルス等と同様視して 異物と判断してしまうのでしょうが、いったい何を根拠にそう判断するのでしょう。
この判断の根拠となるものが、白血球HLA型の相違だそうで、提供される臓器と、それを受け 入れる患者のHLAの型が近ければ近い程、この拒絶反応は起こりにくくなるそうです。
しかし一部の親兄弟以外は、HLAを完全に一致させる事は事実上不可能なので、臓器 移植患者は、何種類かの免疫抑制剤という薬を、一生涯にわたって飲み続けなければなら ないという事も、理論建てて伺うことが出来ました。
この免疫抑制剤とは、免疫反応の『異物識別能力』をにぶらせる働きを持っているため、服 用により拒絶反応が起こりずらくはなりますが、逆に副作用としては、相矛盾した話ですが、 腎臓や肝臓に対して毒性があるために、移植臓器が冒される可能性があるそうです。
さらにまた、この薬は敵と味方の識別能力をわざと低下させるために、過度に服用すると本 当の敵、つまり人体に有害なウイルス等も敵とは判断しなくなって、感染症にかかりやすくなっ てしまうそうで、免疫抑制剤の投与量の決定が臓器移植の成否を決めると言っても良いほど に重要であり、だからこそ、そこが担当医の腕の見せ所である事を知らされたのも、この時期で した。

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